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洗礼 

2日の朝は、午前9時前に起きた。

泊まった部屋には、通りに面したバルコニーがあった。朝の光に誘われて、ビデオカメラを片手に外へ出てみる。昨夜、静けさと闇に支配されていたデリーが、すっかり息を吹き返していた。

動画:AJANTA HOTELのバルコニーからの眺め
AJANTA HOTELバルコニーからの眺め(サムネイルをクリック)

物乞いと思われる子連れの女性、ホテルを出てくる客を待ち構えているであろうオートリクシャーの運転手・・。ほんの10数メートル先に、生のインドがある。これからの旅路を思うと、下腹をひもで締められたような圧迫感を感じた。

身支度を整え、チェックアウトする。このホテルとは、もうお別れ。夕方には夜行列車に乗り、ブッダが覚りを開いた地とされるブッダガヤに向かう予定だ。しかし、そのためにはまず、ニューデリー駅からの切符を買わなくてはならない。

インド国鉄の切符はいま、インターネットサイトを通じて購入できる。僕らももちろん、試みてみた。しかし、何度挑んでも最後の画面でクレジットカードの決済ができず、あきらめてしまった。切符を手に入れるには、ニューデリー駅の2階にあるという外国人専用窓口へ行く必要がある。


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ニューデリー駅近く。普通に牛車が通る

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北側から駅前広場へ入る。左手のクリーム色の建物がニューデリー駅舎


「あるという」などとあいまいな言葉を使ったのは、切符を買うこと以前に、その場所をまず「見つける」ことが、旅行者に課せられた試練であるからだ。旅好きの日本人なら誰でも知っている某有名ガイドブックの投稿欄には、この場所がなかなか見つけられずに苦労した先輩バックパッカーの言葉が並んでいる。「とにかく分かりにくい場所にある」「駅で階段を見つけたら、とにかう上ってしまうのが手だ」。

たどりつけたのならまだマシだ。ある旅行者は、駅の階段の前でインド人に力ずくで通せんぼをされ、そいつの言うままに料金の高い旅行会社
でツアーを組まされたという。その人は5回、階段を上ろうと試みたが、5回とも「力ずくで」阻止されたという。

にわかには信じがたい話だ。

しかし、ここはインド。何が起きても不思議ではない。ニューデリー駅には、ホテルから10分とかからなかった。駅舎に入ると、とにかく階段を探した。しかし、見つからない。人波を掻き分け、前へ前へと進む。すると、駅舎の端に、ホームへ通じる跨線橋の階段が見えた。駅舎の中に通じる階段ではなかったものの、2階への入り口であることは確かだ。歩を速めて上ろうとした。



インド人の男が、近寄ってきた。

男は、大きな声でこう話す。「今日はガンジーの誕生日で祝日だから、外国人専用窓口は開いていない。それでもこの駅で切符は買えるが、座席車だけで寝台車のは買えない。ここからオートリクシャーでコンノート・プレイスにあるデリー観光交通開発公社(DTTDC)のオフィスに行けば、寝台切符も買える。今日、切符を買うならそこで買うしかない」。

最初、僕たちは構わず階段を上ろうとした。しかし、男は持っていた証明書のような物を差し出し、自分はオフィシャルな人間だと訴えた。そして、僕の持っていたガイドブックを半ば奪うようにして、コンノートプレイスの地図にあるDTTDCオフィスを指差した。

怪しいとは思った。しかし、2日がガンジーの誕生日というのは本当だった。出発前に調べると、この日はデリーを流れる河のほとりに人々が集まり、何らかの行事があるということだった。時間があれば見物したかったが、ネットで切符の予約ができなかったため、あきらめたのだった。

たしかに、2日はガンジーの誕生日。ガンジーの誕生日。祝日だから、公的機関は休み。休みだから切符は取れない。切符を取るなら、DTTDCに行かねば。


僕たちの疑い深い心は、次第にほぐれた。


男が手配したオートリクシャーに乗り、10分ほど走っただろうか。かつての支配者イギリス人がイギリス人のために造った巨大ショッピングエリア、コンノート・プレイスに、たしかに着いた。しかし、案内されたオフィスは、明らかにガイドブックに載っているDTTDCの建物とは違っていた。

怪訝な気持ちのままドアを開けようとしたそのとき、中から白人の若者3人が入れ替わるようにして出てきた。ちょうどいい。彼らに尋ねよう。ここはDTTDCかい?僕たちはニューデリー駅の窓口が閉まっていると聞いて、ここへ来たんだ。

若者の一人が、意外なほど落ち着いた口調で言った。

「俺たちはけさ、その窓口で切符を買ったよ」。

目の覚めるような気持ちだった。事態の急変に、案内してきたオートリクシャーの運転手の表情が曇った。彼は二言三言、真実を口にした若者に抵抗してみせたが、背の高い若者が覆いかぶさるようにして何事か話すと、それきり物を言わなくなってしまった。



・・さて、奴の処遇だ。




駅に着いて、初めに上がろうとしていた階段へ向かった。すると、さっき僕たちをだまして偽のDTTDCへと差し向けた男が、今まさに別の白人カップルをそそのかし、オートリクシャーへ乗せようとしているところだった。

大またで歩み寄る。異変に気づいた取り巻きが、僕の肩をつかんで止めようとした。が、もう遅い。僕は奴の肩をたたき、振り向いたその褐色の顔に向かって指を突き立てて叫んだ。

「You are liar!」

男は呆気に取られたように目を丸くしていた。白人カップルは苦笑いしながら歩き去った。一転、勝者となった僕たちは踵を返し、再び駅舎へ向かった。

それから、しばらく駅の構内をさ迷った。やっとの思いで窓口を見つけたときには、ホテルを出てから2時間以上が経っていた。見つけてみると、そこは意外に「分かりやすい」場所にあった。ただ、僕たちが駅に入った方角からは死角になるため、気がつかなかったのだ。

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外国人のオアシス・・


エアコンの効いたオフィスで汗がひいていくのを感じながら、インド2日目にしてすっかりだまされてしまった事実に、インドという国の空恐ろしさを思った。気をつけていたはずなのに、してやられた。ガンジーの誕生日という予備知識が、研ぎ澄ましていたはずの判断力にベールを掛けてしまったのか。

無事に列車の切符を取り、駅を出ると、奴が凝りもせずに別の白人旅行者を口説いている最中だった。指でバツ印をつくり、サインを送る。サングラスの旅行者が気づいたらしく、軽くうなずき返した。

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見れば見るほどいまいましい奴だ!


快適に旅をする権利と環境は、旅行者同士の努力で守っていく。バックパッカー同士、国籍を超えて支えあった満足感で、空いた腹も満たされる気分だった。


これからインドへ行くバックパッカーのために、ニューデリー駅の外国人専用窓口への順路を動画で紹介したいと思う。昔はいざ知らず、今は大きな看板も出ており、決して分かりにくい場所ではない。


ニューデリー駅外国人専用窓口への道









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